人間が勝手に動物の生殖能力を奪うことに、違和感や抵抗感を感じる方は少なくありませんが、そもそも自然とは何でしょうか?
自分で獲物を狩り、厳しい自然の中で淘汰されながら生きる野生動物は、種を保存するため、たくさんの子供を産む必要があります。しかし、すでに人間にペット化され、外敵に襲われる心配もない犬や猫が、同じように自然に任せて繁殖すればどうなるでしょうか?
不妊手術が不自然なら、自由に交配させないのもまた不自然ではないでしょうか。 ペットと呼ばれる動物たちは、もはや自然のままに生きることが許されず、人間に管理され、人間の保護なしには生きていけない存在です。(人間社会に組み込まれた存在という意味では、野良猫も例外ではありません)
人間がそのようにしてしまった以上、社会に対する責任として、しつけや健康管理、繁殖制限を行うのは当然のことではないでしょうか。
年間1万5千頭以上もの犬猫を殺しているのは、行政ではなく、多くが手術など必要ないと思っている人たちなのです。
手術はやっぱりかわいそう。健康な体にメスを入れることをかわいそうと思う気持ちはわかりますが、手術の最大の目的は動物の福祉です。
日本では、毎日たくさんの犬猫が殺処分されていますが、それらはたった一度の手術さえすれば殺されずにすんだ命です。
あなたは産まれてくる子犬(子猫)のすべてに責任が持てるでしょうか?
手術はかわいそうだからと、何度も出産させる方もいますが、犬猫の体にとってよほど負担ではないでしょうか? たった一度の手術と、後々の何百匹もの不幸な命の誕生と、どちらが本当にかわいそうなのか考えてみてください。
また、1匹しか飼っていないから必要ないと言う方も、発情期の管理は思っているほど簡単ではありません。(発情しているのに交配できないのは、犬猫にとって相当なストレスになります)
不妊手術は比較的簡単な手術で、経験豊富な獣医師が行えば、肉体的ダメージもほとんどなく、性衝動のストレスから解放するなど、多くのメリットをもたらします。
家の外に出さないから問題ない。確かに、オスメスを一緒にさえしなければ、家の中にいる限り、繁殖することも繁殖させることもありません。しかし、手術もせず、交配もさせずに閉じ込めれば、年中、鳴き声やスプレー、マーキング行為などに悩まされることになります。 また、性衝動を抑圧されることによって、動物は大きなストレスを感じ、性格も攻撃的になり、生殖器に関わる病気も増えます。 外に出すことなく(散歩は除く)、動物の本能を抑えるには、不妊手術以外にありません。
オスだから必要ない。オスは増えないからという理由で去勢手術をしない人がいますが、オスがいなければメスは妊娠しません。 野良犬猫が増える原因の半分は放し飼いのオスであり、マーキングや発情期の鳴き声など、周囲に多大な迷惑をかけていることを自覚してください。 (未手術でかつ放し飼いにされている猫は、近所の人から見れば野良猫と同じです) 動物の性衝動は非常に強く、不妊手術をせず、なおかつ交配もさせずに家の中で管理するのは非常に困難です。 特に、ケージなどに入れられたり、鎖でつながれ発情したオスほど哀れなものはありません。 手術は発情期の逃亡による交通事故や様々な病気を防止することが可能です。 オスの手術に難色を示す方はまだまだ少なくないですが、犬猫の習性を理解し、メス同様、手術によってストレスから解放してあげてください。
産まれても、責任もって里親探しをするから大丈夫。その気になれば、里親などすぐに見つかると思っていませんか?
中には、里親サイトや譲渡会があるから心配ないなどと言う人がいますが、そういったところを頼ること自体、周りに誰も貰ってくれる人がいないという証拠ではないでしょうか。(愛護団体の多くは自家繁殖させた犬猫の里親探しには協力しません)
良い里親を見つけることは、決して簡単なことではありません。 また、運よく貰われたとしても、一生大切に飼ってもらえる保証はどこにもありません。
貰われた先で手術しなかったために、犬猫がどんどん増え、かえって不幸の種をばらまく結果になってしまったなど、里親探しを安易に考えている人ほど、後で取り返しのつかない事態に陥ることが多々あります。
繰り返し言いますが、日本には貰い手のない犬猫が無数にいます。もちろん純血種も例外ではありません。 年間1万5千頭以上におよぶ殺処分数は、それぞれの身勝手な繁殖が産み出した結果なのです。
あなたの犬(猫)を貰ってくれた里親は、もしあなたが産ませなければ、愛護センターで殺処分される運命の犬猫を救っていたかもしれません。
数少ない里親に対し圧倒的に多くの犬猫が余っている現状を考えれば、新たな命の存在は、今いる動物たちの生きる可能性を確実に奪うことになります。
ご自分の愛する飼い犬や飼い猫同様、行政で処分される犬や猫にも同じ尊い命があることをぜひ考えてみてください。
また、純血種については、長年に渡って人間が近親交配など不自然な繁殖を繰り返してきた結果、遺伝病が蔓延し、病に苦しむ犬猫が急増しています。
知識と責任を持つ、遺伝病に精通したプロのブリーダー以外が純血種の繁殖を行うことは非常に危険です。純血種であろうとなかろうと、動物を産み増やしている以上、この問題に加担していることに変わりはありませんが、不妊手術は、社会的理由だけではなく、こういった遺伝病による悲劇をなくすことにも繋がるのです。
うちの犬(猫)に一度ぐらいは出産を経験させてあげたい。人と動物の繁殖本能には根本的な違いがあります。動物の交配は、すべて種の保存を目的に行われ、人間のように出産に特別な思いを抱いたり、感動したりすることはありません。
出産を経験させてあげたいという気持ちは、あくまでも人間の勝手な思い込みで、一度ぐらいと皆が産ませた結果、無数の犬猫が毎日死に追いやられています。
また、子供の情操教育と称して、犬や猫を繁殖させ、その後飼いきれなくなって、愛護センターに持っていく(もしくは外に捨てる)人が大勢います。出産の神秘に触れ、家族全員で感動するのはいいですが、産まれた犬猫はそのあとどうなるのでしょうか?
昔と違い、今はあらゆる情報が、インターネットなどで簡単に手に入り、自分の犬猫をあえて繁殖させなくても、動物の出産シーンを見ることはいくらでも可能です。
不幸な現状があるにもかかわらず、これ以上繁殖に加担する理由はありません。 命あるものを安易に処分する社会は子供たちの心も荒廃させます。
1匹の動物を慈しみ、最期まで責任をもって飼うことこそ、子供たちにとって素晴らしい情操教育になるのではないでしょうか。
費用が高いから。手術を選択しない場合の様々なデメリットについて、もう一度考えてみてください。 たった一度の手術代と、この先次々産まれてくる犬猫の世話や餌代、里親探しのための莫大な時間や労力等、どちらが高いでしょうか?
一昔前と違って、近年低料金で不妊手術をしてくださる動物病院は増えており、自治体によっては助成金制度を利用することも可能です。また当会のように、病院紹介を行っている愛護団体もあります。たった1匹の手術代が数十倍になる前に、飼い主の責任として、ぜひ不妊手術を行ってください。
手術すると太るから。不妊手術をするとホルモンの影響がなくなるため、太りやすくなると言われていますが、基本的に、肥満は食餌と運動量に原因があります。飼い主が正しい食餌量と適切な運動を心がければ全く問題はありません。
犬(猫)が妊娠中なので。妊娠していても手術は十分可能です。 自宅ではこれ以上飼えない、もしくは餌をあげている野良猫が増えているにもかかわらず、中絶したくないという理由で手術を行わないのは、今罪のない動物たちが殺されている言いわけにはなりません。
命をどう捉えるかは、それぞれの倫理観や宗教観にもよりますが、産まれた命すべてに責任が取れないのなら、不妊手術をするべきではないでしょうか。