かわいい子犬、子猫も半年たてば大きくなり、放っておけばたくさん子供を産むようになります。
日本では、毎日無数の子猫子犬が産まれ、その多くが新しい飼い主を見つけられずに、年間約1万5千頭(内、猫の70%、犬の20%が子犬子猫)が殺処分されています。
「動物の愛護及び管理に関する法律」では、「犬又は猫の所有者は、これらの動物がみだりに繁殖してこれに適正な飼養を受ける機会を与えることが困難となるようなおそれがあると認める場合には、その繁殖を防止するため、生殖を不能にする手術その他の措置を講じなければならない。(第37条)」と明記されていますが、残念ながら産ませてはセンターに引き取りを求めたり、ゴミのように捨てる飼い主が後を絶ちません。
「貰い手が見つからない」ために、社会から「不要」というレッテルを貼られ、毎日数多くの犬猫が闇から闇へ葬られているのです。
では、「飼ってくれる人」を増やせば問題は解決するのでしょうか?
現在、世帯数の約3割が犬か猫を飼い、その総数はすでに人間の子供の数を大きく超えていると言われる日本において、今後、よほど住宅事情や経済状況でも変わらない限り、新たにペットを飼いたいという人たちが増えていくとは考えられません。
海外でも、同様の問題を抱えており、どの国でもすでにペットは飽和状態にあると言われています。 端的に言えば、世界中で犬や猫は「余っている」状態なのです。
では、飼えなくなった犬猫を収容する施設(シェルター)をたくさん作れば解決するでしょうか? 動物保護活動をしている人たちでさえ、よく目標に挙げる「シェルター建設」ですが、決して根本的解決にはならないことは、シェルター維持に必要な資金力や法的整備が日本とは比較にならないほど進んでいる欧米を見ても明らかです。
現在、アメリカやイギリスなどでは、数百、数千のシェルターが存在していると言われていますが、未だにアメリカでは年間300万頭、イギリスでも年間20万頭以上の(2021年度)動物たちが安楽死されています。
アニマルシェルターには、今、存在している動物たちを救済し、生きるチャンスを与えるという重要な役割がありますが、数のコントロールができていない国で、次々にシェルターを作っても、穴の開いたバケツに水を注ぐようなものです。
単にペットを飼う人を増やせば、シェルターを作れば問題解決に繋がるという考え方は、非現実的であり、幻想にすぎません(昨今は、あえてシェルターを持たず、個人ボランティアに預かりを依頼している団体も数多くあります)
飼育放棄や虐待など、不妊手術だけですべてが解決するほど問題は単純ではありませんが、1匹の手術は確実に何百もの罪のない命を救うことに繋がります。
不妊手術は人とペットが共存するための必須条件であるとともに、飼い主一人ひとりが実践できる最も簡単な動物愛護なのです。
人間の身勝手でどれだけ多くの命が使い捨てにされているか、人間の保護を失った動物たちの末路がどれほど悲惨であるか、なぜ不妊手術が必要なのか、すべての飼い主に考えていただきたい問題です。
※オーストラリアのキャットプロテクション協会という団体が行った調査によると、猫に関する苦情のうち82%はケンカや鳴き声、マーキングによる被害で、さらに、トラブルを起こした猫の84%は不妊手術を受けていなかった事が判明しています(JAVA会報より)
アメリカやオーストラリアでは、飼い猫の90%以上が不妊手術を受けていると言われますが、驚くべきことに残りのたった10%の未手術の猫が、次々と新たな野良猫を産み出し、莫大な数の処分数を作っているのです。(オーストラリアのシェルターでも持ち込まれる猫の80%が安楽死されています)
言いかえれば、いくら保護や里親探しに力を入れても、まず飼い犬猫の不妊手術率を100パーセントに近づけない限り、殺処分をゼロにすることなど限りなく不可能と言えるでしょう。
不妊手術がどれだけ重要かおわかりいただけたでしょうか?
犬や猫を飼っていても、その習性や行動について知らない人が大勢います。
「うちの犬(猫)は大丈夫」などと、繁殖について甘く考えていると、あっという間に増え、手がつけられなくなってしまいます。
望まれない命は作るべきではありません。
人も動物も不幸にならないために、どうか不妊手術をしてください。
不妊手術は飼い主の責任であり、動物愛護の第一歩です。