～アニマルウェルフェア（動物福祉）推進ネットワーク～

PETA：OUR VIEWS Euthanasia: The Compassionate Option

安楽死――思いやりある選択肢

http://www.peta.org/issues/Companion-Animals/euthanasia-the-compassionate-option.aspx

アメリカにある動物シェルターは、全体で毎年およそ600万頭から800万頭の動物たちをとり扱っています。そこで躾を受け直して新しい飼い主に貰われるものもありますが、400万頭近くもの望まれない犬や猫たちが、行くあてもなく残されるのです。シェルターは、こうした動物の全てに、彼らが自然に亡くなるまでの間ずっと満足な住処を与え面倒を見たりすることはできません。その結果、彼らは何年間も、狭苦しい檻や犬小屋で孤独とストレスに満ちた生活を強いられることになります。あるいは、そもそも居場所がないという理由でシェルターから追い返される動物もあります。

だからといって、貰い手のない動物を路上に放して放浪させることは、人道的なやり方ではありません。飢えたり凍えたり、車にぶつけられたり病気にかかって死んだりしなくても、彼らはいじめられるかもしれず、残酷な若者たちに殺されたり、動物を実験施設に売る業者たちに拾われる可能性もあるのです。

Good and Bad Solutions
良い解決策　悪い解決策

膨大な数の伴侶動物がいるのに、彼らにとっての良い家庭は不足しています。そのためある場合には、犬や猫をしばしば「いらない余計もの」とみなすこの世から彼らを穏やかに旅立たせることが、シェルターで働く人々ができる最も思いやりのあることになるのです。PETA、アメリカ獣医学協会、それにThe Humane Society of the United States（HSUS）は、訓練を受けた専門家によるペントバルビタール・ナトリウムの静脈注射が、もっとも優しく思いやりのある安楽死方法であると同意しています。アメリカ人道協会（AHA）はこの方法が、動物シェルターの犬や猫のために容認できる唯一の安楽死方法だと考えています。

それ以外の方法、意識のある動物の心臓に注射することは、容認できないことです。薬剤の吸入、減圧、溺死、感電死、射殺などの方法もまた、受け入れがたいものです。なぜならそれらは即死させることが難しく、死亡する前に動物に苦痛をもたらすからです。

ある種の薬剤は、もしもあまりに急速に注射されたり高濃度で投与されたりすると、苦しみをもたらします。また動物に激しい痙攣、筋肉の収縮、心停止を引き起こすストリキニーネのような薬剤もあります。

亜酸化窒素（笑気）、ハロタン（吸入麻酔薬の一種）、それに一酸化炭素などのガスは、高価だったリ効果が信頼できなかったりする上に、動物を怒らせたり興奮させたりする可能性があります。一酸化炭素による殺処分は、ゆっくり窒息していく間、動物に恐ろしいほどの苦しみをもたらします。彼らはしばしば空気を求めてもがきながら、叫び、痙攣します。一酸化炭素による殺処分は、すでにカリフォルニア、テネシー、メリーランド、ロードアイランドの各州で違法となっています。しかし未だにアメリカ中の多くの動物シェルターで用いられています。

シェルターの動物を殺すために用いられる物理的方法には、射殺、感電、減圧があります。射殺の明らかな問題点は、もし銃の操作が下手だったり、動物が暴れたり、銃弾が急所をそれて動物が生き延びてしまったりした時、動物に激しい痛みをもたらす可能性があるということです。感電は動物に激しい痛みや傷を与える可能性があり、確実に死なせられないこともあります。

　減圧室は海面から何千フィートもの上空の気圧を数分間のうちに作りだすものです。この方法を使っている多くのシェルターでは、減圧速度を、推奨されている速さの１５倍まで引き上げることがあります。その速さで減圧すると、動物たちの副鼻腔、中耳、そして腸にある気体が急速に膨張し、相当な苦しみ、あるいは激しい痛みを引き起こします。装置の誤作動、個人のミス、エアーポケットに小さな動物がはまるなどして、偶発的に気圧が途中で再び上がってしまうこともあります。その場合、動物たちは死への過程を全てもう一度やりなおして体験しなくてはならないのです。

　犬と猫の数の過剰が不妊去勢活動をとおして制圧される日まで、私たちは、可能な限り信頼できる人道的な方法で、望まれない動物たちの苦しみを止めなくてはなりません。安楽死は、適切に行われるなら、多くの場合最も思いやりある選択肢となります。

A Compassionate Goodbye
思いやりに満ちた別れ

一緒に暮らす動物たちが重い病気になり回復の見込みもなく苦しんでいたり、本当に生を楽しむことが不可能に見えたら、それは彼らに安楽死によって穏やかな死を提供すべき時なのかも知れません。かかりつけの獣医師に率直に話してくれるよう頼んで下さい。それでまだ疑問があるなら、セカンドオピニオンを得ることを考えて下さい。あなた自身が「逝かせること」を恐れているために、友である動物の苦しみを引き伸ばしているのではないか確かめて下さい。そうした行為は、愛する動物を犠牲にしてただ長々と待ち続けているということなのです。

　もし自分の伴侶動物が非常に不安そうになったら、あなたがたは安楽死の予約時刻のたとえ２時間前でも獣医師から精神安定剤を手に入れて与えたくなるかもしれません。動物がリラックスしていると、獣医師にとって注射がよりやりやすくなります。自分の伴侶動物が安静にしていれば、あなたもまた、より落ち着くことでしょう。大切なことは、あなたの友である動物が意識を失ってしまうまでは、自分は明るく平静でいようと努めることです。

　獣医師によっては、あなたの家まで来て注射をしてくれます。そうすると、痛みがあったり、車や病院を怖がったりする動物のストレスを和らげることができます。そうでない時は、あなたの気力を支えて帰りに車で家まで送ってくれる、家族か友人と一緒に動物病院に行きましょう。もし必要なら、病院の職員に頼んで動物を病院の中まで運んでもらいましょう。もしもあなたが動物の遺体を病院に置いてくるのでなく、連れ帰って埋葬してやるつもりなら、もしくは動物がひどい痛みや恐怖の中にいるのなら、あなたは医師に頼んで車まで来てもらい、車中で注射してもらってもよいのです。

　脚の静脈にペントバルビタール・ナトリウムを注射されて穏やかに眠りこむまで側にいてやることは、動物にとって大きな慰めとなります。しかし、もしあなたが著しく動転して不安になっていると、その気持は友である動物に伝わるかもしれません。落ち着いて穏やかな声で話しつづけることが大切なのです。あなたの伴侶動物の脳はすぐに「眠りに落ちる」かも知れませんが、心臓は、その後も数分間は拍動を続けるかもしれません。鎮静剤や老齢のせいで循環が遅くなっているためです。慎重な獣医師は、心臓が最後の一打を終えるまで見守ります。もしあなたも最後の最後まで別れを言うために側にいたなら、友が穏やかに旅立ったことを決して疑わなくてすむでしょう。

最後に、友である動物の死に深い悲しみと大きな喪失感を感じるのは、当然のことです。このつらい時期を乗りきる助けとして、どうぞPETAのリーフレット「伴侶動物を失って」を見て下さい。また、現在、病院や個人のグリーフ・カウンセリング・サービスの中には、人間ではないが親しい友や家族とみなす存在を失った人がその喪失に適応するのを助ける、そういう必要性を認めているところがあります。そうした助けを得て、あなたの伴侶動物を苦痛なく穏やかに逝かせてやるために、あなたが出来ることの全てをしたのだということを知って、慰めを得て下さい。

もしあなたが家庭内に他にも伴侶動物を飼っているのなら、彼らの気持ちもまた考慮してやって下さい。彼らが亡くなった動物と強い絆を持っていた場合、逝ってしまった仲間の身体を見て臭いをかぐ機会を持たせてやることは、彼らの大きな助けになります。そうすることで、彼らは何が起きたのかを知り、いなくなった仲間が戻るのをドアの所でいつまでも待たなくなります。動物たちもまた深い悲しみと喪失感を抱くことはよくあります。彼らの気持ちに注意を払い、あなたがそうするように彼らにも別の興味や活動を与えてやることで、悲しみを乗り越えられるよう助けてやって下さい。

What You Can Do
あなたにできること

もしあなたのいる地方の動物収容施設や動物シェルターが、ペントバルビタール・ナトリウムの静脈注射以外の方法を使っているならば、地方当局に抗議し、人道的な方法を使うように要求して下さい。安楽死の方法を規定する州や地方の法律をチェックして、あなたの地方のシェルターが以下の条件を守るようにさせて下さい。それは、安楽死は十分に訓練された思いやりのあるスタッフにより行われるべきであり、また他の動物から見える所では安楽死を行なってはならないという条件です。

PETA 目次

３　犬のつなぎ飼い

７　安楽死

８　野良猫

９　命を奪い取る慈善活動